遠距離通勤の中で、ジャレット・ダイアモンドという人が書いた「銃・病原菌・鉄」という本を読んだ。
ベストセラーになった本なので、既に読んだ方も多いだろうと思う。

その内容としては、
何故ヨーロッパ人が世界を支配するようになったか、
何故新大陸の、昔の言い方をするとインデアン、インディオの人たちが征服され、その逆はなかったのか、
その理由を1万3千年の人類史の中から説明しているものである。
その直接の理由は、銃・病原菌・鉄を持っていたのがヨーロッパ人であったことによるのだが、それでは何故ヨーロッパ人がそれを持ち、旧大陸の人達は持っていなかったのか、という根本の疑問を解き明かしている。
人種的に特別優れていたからではない。
氷河期の終了直後の1万3千年前はどの大陸の人類も皆同じレベルだった。
結局は、ユーラシア大陸は農業に適した植物や家畜化しやすい大型哺乳動物に恵まれていたこと、
そして東西に広がっており農業・牧畜が他民族へ伝播しやすかったこと、
これが人口の増加を招き、社会を高度化させたのがその根本理由ということである。
これらのことを実に詳細に説明しており、なるほどと思うところ多々あった。
で、話は病原菌のことである。
というのも、タイトルにある銃と鉄の話はほとんど書かれていない。
推定2千万人いたアメリカ大陸の人口は、ヨーロッパ由来の病気、例えば天然痘、麻疹、ペスト、インフルエンザなどにより2百年も経たないうちに百万人まで減少。
コロンブスが来た時には先住民が800万いたイスパニョーラ島は、先住民数がゼロに。
ハワイ諸島の先住民は、50万人が8万人に。
約6千人のスペイン人が人口数百万のアステカ帝国を滅ぼしたのは、圧倒的武力もさることながら人口を半減させた天然痘の影響。
インカ帝国も同様。
その他、オーストラリア、フィジー等々のすさまじい事例が列挙されている。
こういった病原菌の発生原因の多くは、家畜に由来しているとしている。
つまりは、人間に伝染しないはず病原菌が、高密度飼育の家畜中で変化適応し、人間にも感染するようになった。
そして、人口密度も高くなっており、あっという間に感染していった。
ヨーロッパ人は長い間病気に晒されていたので、免疫があったが、新大陸の人達には免疫がなかった。
ところで、著者は、ペスト、天然痘、インフルエンザなど特に人類史に大きな影響を与えた病気の発祥地を中国とみている。
そういえば、今、猛威を振るっている鳥インフルエンザも、上海か。
歴史は繰り返すか?
先に免疫を持った中国人が世界を席巻する日も近い?
これだけ医学が進歩し、瞬時に情報が伝達する今日ではそんなことはあるまいが。
、
著者は、同じユーラシア大陸でも中国ではなく何故ヨーロッパが主導権を握ったか、という点も分析している。
これも地理的要因としており、中国は割合平坦で海岸線も単純であったため人の行き来がしやすかった。
反面ヨーロッパは、海岸線が複雑で地形も険しく、人の移動が比較的困難であった。
これが統一された中国と不統一のヨーロッパを生み出した原因であり、
ヨーロッパは不統一であったがため競争社会が継続し、統一された中国は一人の命令で方針決定されるようになり、これが原因でヨーロッパに負けたとしている。
さて、この理由はどうだろうか。
多少納得できない点もある。
そしてこれからはどうなるのだろうか。
この本では、言語や文字の発達の話など他にも興味深いものがいくつもあった。
こんなどうでもいいことをボーっと考えているのも遠距離通勤の暇つぶしには最適か。