これを書くべきかどうか、迷っている。
決して笑いのネタにするつもりはなく、他山の石、という意味合いで記録しておくこととした。
一週間ほど前、友人から電話があった。
「家に来て欲しい」とのことで、それ以外のことは、さっぱり言っている内容が理解できなかったが、長年の付き合いでもあり、「行く」というこで返事をした。
そして、昨日出かけてみた。
その友人宅には以前にも一度行った事がある。
十数年も前のことで、その時はマンションの購入直後で、新居拝見、ということであった。
その頃も今も彼は独身である。
最寄のバス停で待ち合わせた上で、伺った。
「さあ、入って」とドアを開けてもらったのだが、玄関から先はどうやって入ったらよいのか、わからない程のゴミの山。
いや、「荷物」。
靴だって、何人で住んでいるのか、と思うほど何足も出ていた。
廊下の床面が荷物(ゴミ)で見えない。
その上を、ただ乗り越えて、踏みつけてリビングに行く。
靴を脱がなければよかった、と思った。
リビングに着くと「まあ、座れ」と言われたが、座るところが無い。
ただ呆然と立ち尽くすのみ。
風呂場の浴槽の中にも荷物(ゴミ)。
どうしているかと聞けば、シャワーの場所だけは確保しているという。
クーラーを最近変えたと自慢する。
なるほど新しい。
しかし、これを付けに来た人は、この荷物(ゴミ)の中を取替え工事をした訳だ。
気の毒なことこの上も無い。
驚いただろうな。
呼ばれた訳をよくよく聞いてみると次のようなことであった。
マンション全体で地デジ対応の工事をすることになったのだが、それは各部屋のテレビの端子の工事も行うものである。
友人宅の部屋でも工事を行うのだが、室内が荷物(ゴミ)で一杯であり、テレビの端子があるところまでたどり着けない。そこで荷物(ゴミ)をどけるのに協力をして欲しい。
こんなことであった。
室内を見た瞬間、私の力ではこれは無理だ、と思った。
しかし、全てを片付けるのではなく、端子までの「通路をつけるばよい」、とのことであった。
before正直言って、逃げて帰ろうかと思った。
afterこの右手奥に端子があり、とりあえずそこまで歩ける道をつけた状態。

雪国において、冬に雪がかなり降って、人が歩けるように雪かきをするのに似ている。
この場合、雪は道の傍らに積み上げておく。
この部屋の場合はそうもいかず、ベランダに出しておいた。
ほうって置いても雪は春になれば溶けて消えてしまう。それは、自然の摂理である。
しかし、荷物(ゴミ)は溶けることは無い。
工事が終われば、ベランダから室内にまた戻ってくる。
いや、ひょっとしてベランダにそのまま置かれたっきりの可能性もある。
荷物(ゴミ)を見て見ると、購入して一度も着ていないと思われる衣類、やはり購入して袋も開けてもいない日用品なども数多く埋もれており、ゴミとはいえないものも多い。
しかし、二十年前のワードプロセッサー、パソコン、古い六法全書、洗濯屋から来る数多くのハンガー、書籍類、クリップなどの事務用品などがうず高く埃とともに積まれていた。
ある部屋は、マンション購入以来、十数年間、掃除をしていないらしい。
綿埃はおびただしく、汗にまみれた全身にくっ付く。
マスクを持って行けばよかった。
北側の部屋は、湿気で壁にカビが生えており、また、壁紙もはがれ始めている。
畳は黒ずんで変色している。
掃除機を要求すると、おもちゃの様なハンドクリーナーを持ってきた。
ちっとも吸い込みはしない。
荷物の下から掃除機を見つけたのだが、コンセントにもなかなか繋げない。
使っていないせいか、何か異物を吸い込んだせいか、異様な音がしたがハンドクリーナーよりはましなので、使い続けた
窓を開けたせいか、蚊が多く刺されたので、蚊取り線香でも無いかと尋ねたら、錆びがかなり出始めスプレー缶の殺虫剤が出てきた。
何年前のものかと、おそるおそる使ってみたら、シューッと出るにはでた。
長年の友人でもあるし、私の忠告としては「もうこうなると自分で片付けることは不可能。金はかかるが専門業者を呼んで片付けてもらうこと。」
これに対し友人は「ゴミではない。捨てるのはもったいない。大事なものも多い。」であった。
なかなか、意見の一致はみない。
例えば、片付けていると下のほうから十数年前の家計簿が数冊出てきた。
私 :「ハイ、ゴミだから捨て。」
友人:「これは個人情報だから簡単には捨てられない。」
私 :「そんなもの誰が見たがるの。他人には何の価値もないよ。」
友人:「思い出もあるし、なかなか捨てられないよ」
私 :「それを見て分析して今後の支出計画に役立てる、ということがあるの? そんなことができるなら、買ってきて未使用のものがこんなにないよ。」
友人:「そう言うなよ。シュレッダーに掛けたりして、少しづつ、計画的に片付けるよ。」
私 :「シュレッダーに掛けた後の裁断したゴミ、それすらその変に放置しているんだよ。だいたい計画的、というのはやらない、やれないというのと同義語。」
長年の友人ということも会って随分きついことも言ってたのだが、実は、我が家でもここまでではないが、似た状況にはある。
納戸の中なんてひどいものである。
引越しして荷物を入れたっきり片付けもしていないし、悲惨な状態である。
そのうち、そのうち、がずうーーーと続いている。
引越しして十数年一度も掃除せず、なんてことにもなりかねない。
もって他山の石となす。