七月のある日の朝、いつものように出勤すると、掃除のおばさん達がおろおろおとし、職場は大騒ぎになっていた。
なんと天井の一部が崩れて落ちている。床は一面水浸し状態。
漏水のようである。ちなみに私のいる部屋は二階である。


私の事務室は天井が落ちただけで大したことがなかったが、高価な検査機器が置いてある隣室は、機器も水浸しのようであり、照明にも水がかぶっており、シロートの私から見ても漏電が懸念されたので、スイッチを切って回った。
そのうちに、続々と技術系の出勤者が来て、なんとか応急措置はとられた。
原因は、前日に、三階に設置されたある装置に水を入れるのに、家庭用の散水用のホースを使ったのだが、そのホースの先は止水したものの、元栓である水道の蛇口を閉め忘れ、劣化していたホースのヒビ割れから漏水した模様である。
ひと段落して後、原因を作った若い人が、方々に頭を下げて回っていた。
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私にも漏水経験がある。
30才前後の頃だと思うが、ボロいアパートの二階に一人で住んでいた時期である。
日曜日の午前中、いつものように洗濯をしていた。
狭くて老朽化したアパートであるので、洗濯機置き場のようなものは無く、洗濯機は台所に置いていた。
二層式の洗濯機に、台所の蛇口へホースを繋いで水をいれ、排水はホースを伸ばして風呂場に流す、そんな形式である。
洗濯中につい寝てしまった。
ドアを誰かがガンガン叩く音で目が覚めた。
目が覚めた瞬間全てを悟ったが、時すでに遅しで、台所は一面海状態。
慌てて水道の蛇口を閉めようと手を伸ばすと、手が痺れる。
完全に漏電状態になっている。
ますます慌てるが、蛇口を閉めないことにはどうにもならないので、感電にもめげず何とか閉めた。
ドアをガンガン叩いたのは、階下の人であった。
怒り心頭の様子。
水は結構溜まっていたのだが、拭こうにも雑巾なんかでは全く足りず、そうこうしている間に、何にせボロいアパートなのでみんな、階下に行ってしまった。
水が引くと、さすがに蛇口を触ってもビレビリと感電することは無かった。
一応落ち着いてから、階下の人にお詫びに行き、また後日なんかを買って持っていったような記憶があるが、やっぱり怒っていただろうなぁ。
こちらとしては、あまり掃除していなかった台所の床がピカピカになった、という想定外の効果もあったが。
その後間もなく、階下の人は転居したが、私はその後もずうーとそのボロアパートに住み続けた。
職場で漏水を起こした人もションボリしていたが、その気持ちよくわかる。
人は皆失敗するものなんだよ!
この失敗を次に生かせればよし、だよ。