みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意本屋でこのタイトルを見たとき、なんだこりゃ? と思いつつ、つい買ってしまった。

観光、グルメ、そしてミステリー、と2時間ぐらいのサスペンスドラマになりそうな、推理小説である。
ええーーー????という点がいくつかあったので、ヤボ、を承知しつつも、ストーリーに触れない範囲で紹介してみたい。
○登場人物宮沢賢一郎・・・・・大和新聞の記者。東北総局遊軍担当で、産休者の代替で会津若松支局に二週間前に派遣された。
かつては東京本社でスクープをものにする天才肌だが、いろいろあって左遷。女性に大変もてる。
携帯の着メロが春日八郎の赤いランプの終列車。
田名部昭治・・・・警察庁のキャリア捜査官。身長192cm。東大法学部を三番で卒業。なみいる省庁からの誘いを断り警察庁に入る。
現在警視庁捜査二課の管理官。
坂内春香・・・・東京の人だが、仕事に疲れた時昭和村のからむし織の「織り姫」の体験イベントに参加し、昭和村が気に入り住み付く。
その後、村役場職員と結婚するが、すぐに夫は癌で亡くなる。しかし、昭和村が好きで昭和村喰丸に義父母とともに暮らしている。
大和新聞会津若松支局の編集助手。
稲本芳正・・・・奥会津が地盤の与党の大物の二世議員。
父も大蔵大臣を務め、「会津っぽ」いわれた気骨ある政治家であった。
○こんな移動は可能か?宮沢賢一郎は、昼食に山都でそばを食っている最中に殺人事件の連絡が入り、事件のあった田子倉ダムに車を走らせる。
これは、「河井継之助」と関係があると感じて、河井継之助記念館に立ち寄り見学する。
その後、田島町の警察署で記者会見に立ち会う。
そして、坂内春香を昭和村喰丸に送り、ついでに春香がからむし織を織るところを見学する。
最後に会津若松に帰り、郷土料理店で地酒を飲む。
これがなんと半日の行程である。
ちなみに、山都でそばを食べているときに「SLばんえつ物語号が郡山方面に出発した」とされており、裏づけを採るために時刻表で調べてみると山都駅は12時49分発であった。
距離をマップファンで調べてみると、約280km、平均時速40kmで走って約6時間かかる。
「季節は、3月末、道路の工事が多くてあっちこっちで片側通行である」ともされている。
よほどのスピードで走ったのか?
おまけに、SLばんえつ物語号は会津若松までしか行かない。「会津若松方面に出発した」として欲しいところである。
○因習このミステリーのポイントでもあるが、昭和33年狩野川台風の際、桧枝岐村では水害に襲われ、作物がとれず「間引き」が行われようとした、とされている。桧枝岐村とはいえ、昭和33年でのこの話は無理ではないのかな?
○現代の因習奥会津は道路の整備が遅れており、冬季は雪で不通になるところも多い。これでは、冬は病院に長期入院するしかなくなってしまう。
会津の山間部に住む老人は冬場には死を覚悟せざるを得ない。これは現代の間引きだ。
ということで、それこそ昭和33年ごろならば理解できるが、「アメリカ発の金融危機」も書かれているところをみると、今年の3月4月頃の話の設定であり、この論理の展開にも無理があるなぁと思う。
○守旧派対改革派建設業界において、守旧派は一次下請け、二次下請け、三次下請けという縦系列であるが、改革派は自分の得意分野で集まった横系列のグループ化である。
改革派は新たな時代を切り開くべく画策するが、これが守旧派の反感を買い事件の契機となる。
でもなぁ、既にあるJVとかSPCとか言われるものは、横系列のグループ化じゃないの?
いまさら改革派でもないんじゃないの?
○完全犯罪死体を完全に消し去るために、岩魚の養殖池に入れてしまう。岩魚は悪食なので何でも食べてしまい、死体は残らない。
おいおいピラニアだって、骨ぐらいは残すだろうよ。まして、岩魚だよ、いくらなんでも・・・・。
いや、死体をミンチにすれば可能か?
でもそこまでしなくとも、奥会津は山ばかりだから埋めたほうが手っ取り早いのでは?
ほかにもいろいろ??の点はあるが、これはフィクションなのだからこの辺にしたい。
グルメの方は、山都のそば、桧枝岐の裁ちそば、こづゆ、鰊の山椒煮、馬刺し、岩魚料理、そして最後はソースカツどんであった。
テレビドラマ化されたときは是非見てみたい。
坂内春香役の女優さんは誰がいいだろうか?
けなげで、かわいくて、お色気もあって、義理人情もあって、その上ちょっと複雑な生い立ちもある、という難しい役である。
楽しみにして待ちたい。